グノーシス主義

グノーシス主義 Gnosticism

一世紀から三、四世紀にかけての地中海世界、オリエント世界での思想運動。また、グノーシス的傾向を持って成立した宗教の諸宗派を指す。

グノーシス(gnosis:γν嘗メヲノ嘗・とはギリシア語で知識、認識を指す言葉で、knowの語源でもある。日本語では伝統的に「神智」と訳される。主流派のキリスト教神学で言われる「テオ・ソフィア」も「神智」と訳されるが、実は、「ソフィア」は古代グノーシス諸派の多くが、宗教的神話で好んで神格化、又は人格化した概念でもあった。

(ちなみに、古代以降のグノーシス主義と、ブラヴァツキー夫人が創設した現代の「神智学会」とは直接の関係は無い)

  • 物質世界と精神世界(霊的世界)の二元論的対立による反宇宙的世界認識。
  • 物質世界のすべてを悪と規定し、精神世界に上位の神を置く。物質世界の創造神を劣位の神、または、悪神とみなす。
  • 物質による肉体を持つ人間も悪であるが、内在している忘れられてしまった神性による自己の昇華。
  • 教団が外部に対して秘密にしている叡智(神性)の伝授。

——などがグノーシス主義の主な共通点と考えられる。

あえて日本人にイメージしやすい乱暴な類比をすれば、グノーシス諸派の教義には、「厭離穢土、欣求浄土」を唱えた浄土宗のそれに似たトーンがある。

傾向としては、既存宗教の伝統からは飛躍の多い経典を、新たに作ることが多い。これは、現在では、「物質世界のすべてを悪と断じ」「内在している忘れられてしまった神性」を想起する、との思考法から必然的に生じた傾向と考えられている。

近年では、グノーシス主義は、初期キリスト教異端やユダヤ教神秘派、マニ教マンダ教という特定宗教、宗派の枠内から生じたものではなく、一世紀から、三、四世紀にかけてネオプラトニズムなどの思想も含めた諸思潮の間から横断的に生じたトレンド、との説も唱えられている。

つまり、諸宗教の宗論が競合する状況下で生じた相互影響の結果、各宗教のトレンド内で個別に、しかし、あい前後して生まれたのがグノーシス諸派だ、という学説である。

この学説は、グノーシス諸派がキリスト教諸派の宗教活動の内から生じたものか、キリスト教以外の異教の影響を被った宗派として生まれたものか? とのテーマについての宗教史、思想史や文献学の研究から生まれた。

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