題名
小説『探偵部倶楽部最後の事件』 Part7.名探偵の死
責任者
梗概
楽鈴寺光太郎が死体で発見された。
本文
漣はリビングの窓を開けて煙草に火をつけた。部屋の暖かさがすえた匂いと 共にぐんぐん外に逃げていく。こたつに寝ている葬希と九法と操、こたつの上 のマルガリータと豆の残骸。ウッドデッキに積もった雪が邪魔だったので『夜 光虫』で少し溶かし、空を見る。既に明るくなっていたが、雲は厚く、時折思 い出したかのように小雪を散らせていた。 昨晩の嵐のせいで、玄関を開けるのにも苦労するほど雪が積もっている。ス キー場に至る道も新雪で覆われてしまっており、管理人が道を整備するまでス キーはお預けの様相だった。 ピンクのダウンジャケットが隣のロッジ裏からこちらに向かって歩いてきた。 散歩に出かけたみのりだ。昨日あれだけスキー場で転んで、まだ雪の味見が足 りないのか、膝上まで埋まりながら必死の表情で泳ぐように。実は走っている つもりなのかもしれないが。 「うお、当麻くんなんで窓開けてるの」 「部屋が臭いから」 「臭くても死なないけど、寒いと死ぬよ」 「それももっともだな」 目を覚ました葬希の抗議にうなづいて漣は煙草を消し、窓にかけた手を、 「当麻さん」 みのりの声に止めた。みのりの唇がふるえ、白い息がウッドデッキをゆっく りと流れる。 「——楽鈴寺さんが」 「光太郎がどうした。二日酔いの挙句、前非の数々を悔いて尼にでもなるとで も言いだしたか」 「当麻くん寒いってば」 漣の位置からは少し逆光気味になっていて、みのりの表情がやけに影深く見 えた。 「当麻さん、楽鈴寺さんが」 赤く染まった光太郎の死体は、半ば雪に埋もれていた。顔だけは白く、不思 議なほど穏やかで。ただ、あの強い意志を秘めた瞳に、シャッタのようにまぶ たが下りていた。首から下は腹も背も脚も手も、余すところなく刺されていて、 傷口から生えたなにかの鱗が椿を散らしたかのように、彼女を飾っていた。 横向きに丸まって、彼女にしてはひどくおとなしく。ロッジの植え込みの下 なんて、どこまでも地味なロケーションで。楽鈴寺光太郎は、死んでいた。 漣は無言で彼女の足元の雪を掻いた。20センチほど下からシャーベットの ようになった血痕が出てくる。そのまま彼女から遠ざかるように、掘り進めた。 結局発見された場所から7メートル程度林に入った所まで、血痕は続いていた。 つまり光太郎は、犯行現場から移動したか移動させられたことになる。 「漣さん……光太郎さんをロッジに」 隣に来た操が静かにうながした。漣は立ち上がり、膝の雪を払う。既にみん なロッジから出てきて、光太郎のそばに立っていた。みな一様に不思議なもの を見るような顔をしている。漣もそうだった。 「小暮、光太郎を運んでくれ。できるだけ丁寧にな。操は簡単で良いから検視 してくれ。みのり君は現場の保存を」 現実感がなくて妙に冷静だった。ガラス越しに世界に触れるような座りの悪 さ。九法が彼女を抱き上げると、鱗と植え込みの葉が音もなく落ちた。みのり が声を抑えながらしゃくりあげはじめる。それを弔鐘に、部員達はロッジまで 歩いた。誰もが言葉を忘れていた。短い葬列に並んだ者たちは、これから探偵 無しで事件を解決しなければならないことを知っていたのだ。
PCの言動についての要望
展開についての提言
メモ
- とりあえず死体発見パート書いてみました。
- そこに至るまで2回分くらいはあるだろうと、パート5,6をあけてます。
- 光太郎はダイイングメッセージを仕込んでいます。微妙ですけど。
- 漣はそれに気づきましたが、操もそれに該当するので彼女も疑い始めます。
- この次の初期情報整理パートもある程度用意できてます。