『里見の足』について
異形集団里見一族の用いる歩行術、足運びの総称。空を飛ぶことこそないが重力を無視したかのような動きを可能にする。以下はその修行法である。
レイラインの流れに沿って足を動かさずに歩くことよりアプレンティスの訓練は始まる。この技を四十五日かけて修めた後、自らのオドを調整し地の精と折り合いを付けることで自在に移動できる域に達する。
この段階まで至ると訓練は一段落となり、これより上に至るには魂をメンス・デウスに向かって昇華させる必要がある。月を越え七つの天球層にまで往けることが前提であるとされている。あまり登りすぎるとその魂の性質上神なる意志に浄化されかねないので注意が必要だ。
次にアプレンティスは肉体と物質界との関係性を希薄にする。異界の食物を口にし、体内の呪物に身を委ねることで次第にその肉体は物質界にありながら他界に属するものとなる。その過程については「里見の目」「里見ライフ」の項も見よ(未訳)。
十分に魂と肉体から断絶されれば、あとは初歩の歩行術の応用で壁に足を貼り付けて歩けばよい。ただし、重力から断絶されても宙を浮くのは避けた方がいい。里見一族の呪物は特殊な設定がされているのでない限り大きく地の影響下にある。これは不浄は地よりいずるためだ。あとは推して測るべし。
最後に、「里見の足」を修めたアプレンティスはその技を存分に他者に見せつけるべきだ。本来秘儀は深淵に隠されたるものであるが、この技は見るものを惑わし、脅かし、怪人を怪人たるに相応しく仕立て上げるためにある。くれぐれも意味のある使い方をしようなどとは考えないことだ。そうした者に里見の呪物は幸いなる悲劇をもたらさない。