西斑縫 Nue Nishimura
『病院』から逃げ出してきた少女。『水』を浄化する力を持つ。
最初の記憶は白く、窓のない部屋から始まる。三日に一度の実験と、毎日の検査。
縫の身体にはあちこちに注射針のあとがある。
白い壁、白い寝台、白い廊下、プラスチックの食器、味気ない食事、白衣を来た男たち。
記憶の殆どは白で埋め尽くされていた。ただ一点を除いて。
七日に一度だけ、昼食のあとの数時間、縫は中庭に行くことが許されていた。
四方が白い壁に囲まれてはいるものの、そこには空の青が、木々の緑があった。
そして、そこで会える彼だけはほかの男たちと雰囲気が違った。
本を読んでくれ、話し相手になってくれた。縫は彼と会っている時間だけ安らぎを感じることができた。
何年そこにいたかは覚えていない。そこに入る前のことも思い出せない。
ある日、縫は初めて外に連れ出された。視界を覆う霧の向こうに停車している窓の塞がれた灰色のバン。
促されて乗り込むと、その中には二人の灰色の男と、彼がいた。
それからどうなったかはよく覚えていない。気がつくと必死で逃げていた。
冷たいアスファルトが追われる縫の裸の足に容赦なく食い込む。
背後に灰色の気配が迫る。
そのとき、目の前にバイクに乗った男が現れた。
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人間関係
- 立川香方
- 灰色の男たちに追われていたときに助けてくれた人。
- 里見ぎぐのまゐ・テトラ
- 立川の傍にいつもいる女の人。
- 天海眺界
- 立川香方の友人。部屋が散らかっているらしい。
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