マホメット
イスラームの開祖マホメット(ムハンマド)の政治家ぶり、また、イスラーム勃興当時のアラビアの土壌などが、100ページ強で鮮明に描かれている。
1989年5月に講談社「学術文庫」版として発行された本書は、弘文堂「アテネ文庫」の『マホメット』(1952年)が再現されたもの。人文書院の単行本『イスラーム生誕』(1979年)の第一部ではかなり改変したものを、もう一度もとの姿に戻して原形に復帰させたと著者まえがきにある。
マホメットに向けられた著者の憧憬と情熱がほとばしるような、叙情的で力強い文体であることが特徴的。
文末に投じられた著者の問いかけが、読後に深淵なる余韻を残す。
- 著
- 井筒俊彦
イスラームとは何か。マホメットとは誰か? 根源的な謎に答えるため著者はマホメット出現以前のアラビアの異教的文化状況から説き起す。沙漠を吹暴する烈風、蒼天に縺(もつ)れて光る星屑、厳しくも美しい自然に生きる剽悍不覊(ひょうかんふき)の男たちの人生観と世界像。魅力つきせぬこの前イスラーム的文化パラダイムに解体を迫る激烈な意志としてマホメットは出現する。今なお世界史を揺がし続ける沙漠の宗教の誕生を、詩情豊かに描ききる名著の中の名著。
用語や登場人物
- 用語や人名
- 解説
メモ
書誌情報
講談社 学術文庫 1989年5月発行
人文書院 1979年1月発行
弘文堂 アテネ文庫〈第196〉 1952年発行